2024/12 円安とインフレ対策

日本は短期金利引き上げを含めて金融政策をより弾力的に運営する必要にますます迫られるだろう。日米金利に差があるときには、金利の低い日本で借りて金利の高いアメリカに逃避する(キャリートレード)と利益が生ずるので、円安を止めるのは難しい。

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慶応大学産業研究所の野村浩二教授は日米の生産費を比較し、それを均等化する為替レートを算出している。それによれば、最近の推計値は1ドル94.8円であるという。

第一に、トランプのアメリカは各国の防衛は各国に任せるという孤立主義の傾向を強めるであろう。いまアジアには中国や北朝鮮の軍事力拡大、そして台湾の問題など日本にとっての脅威が多いが、アメリカは「いつまでも他国の守り神ではない、各国も自前で守れ」という要求が米側から提出される公算が強い。日本も自主防衛能力を高め、財政負担を増加することを求められる。

第二に、大統領の姿勢が「強いアメリカ」を目指すと受け取られるとドル高、つまり円安の傾向が強くなるかもしれない。確かにアベノミクス以前のデフレ、不況を招いたように継続的な円高も望ましくないが、逆に現在のように極端な円安も日本投げ売りに近く、将来的なインフレの危険も多い。

為替レートは通貨間の相対価格であるから、その最も重要な要因は世界で保有されている円建て資産とドル建て資産との相対比率である。したがって日米の通貨政策が最も重要な為替レートの決定要因であり、財務当局の介入は長期的な影響力を持たない。

トランプの再選が市場により「強いアメリカ」の期待を生むとすれば、為替相場をいっそう円安方向に押しやるかもしれない。これに備えて、日本は短期金利引き上げを含めて金融政策をより弾力的に運営する必要にますます迫られるだろう。日米金利に差があるときには、金利の低い日本で借りて金利の高いアメリカに逃避する(キャリートレード)と利益が生ずるので、円安を止めるのは難しい。

<トランプ再選で過度な円安が進み、インフレをもたらすなら日本経済には「ショック療法」つまり利上げが必要だーー。アベノミクスの生みの親である浜田宏一・元内閣参与が「イシ・トラ」時代の日米経済関係を読む>